片桐兄妹の言うことにゃ
4分の3の方を。
「私情」
「しじょう」
「わたくしの事情」
「漢字はわかるもん」
少し顰めた顔に千治が笑う。
「まあそれは追々」
はぐらかし、玄関の方へ視線をやった。
同時に鍵が回る。扉が開いて、その奥から藍が現れた。
真っ直ぐ千治を見る目と合う。
「お兄ちゃんおかえり」
「ただいま。千治来てたのか」
リビングまで来て、燐の方を向いた。頷いて答えると、その視線が千治へ戻る。
「見舞いだよ見舞い」
「へえ、よく燐が休みだって分かったな」
「偶然知った。そんな殺気立つなよ」
千治の言葉に、燐はちらと藍を見上げる。