片桐兄妹の言うことにゃ

確かに、ピリついた雰囲気を纏っている。
勝手に千治をあげたのがまずかったのだろうか。

不意にその空気は消え、藍が鞄を下ろして燐を見る。

「ちょっと千治と話してくる」
「あ、うん」
「じゃーな、燐」

その言葉に、もう戻ってこないのだと察した。うん、と頷いて燐も立ち上がる。

和室の窓を開けて、千治の靴を持ってきた。

「お、さんきゅー」
「お前どっから入ってんだ」
「チャイム押しても出なかったからさ」

なら大人しく帰れよ、と藍は目を細める。
靴を受け取った千治と藍が玄関を出ていったのを見て、燐はテレビをつけた。

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