片桐兄妹の言うことにゃ

先日、燐と喧嘩した石川英子の姿は無かった。

顔にガーゼを貼った燐と視線を合わせる者はいない。と、思ったが。

「片桐、先輩が呼んでる」

顔を上げるとクラスの男子。燐は名前も分からず、そのまま視線を入り口へと向けた。

「昼飯食おーぜ」

千治がいた。

男子へ礼を言い、席を立ち上がる。教室を出ると、廊下には千治と高陵が立っていた。
高陵は燐の顔を覗き込む。

「まあ派手に」
「……カオリン」
「カオリン?」

千治が噴き出すように笑った。高陵は何のことだ、とそれを振り返った。
燐は千治の影に隠れるようにして移動する。

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