蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
「それで……杏凛さんはどうして匡介さんに甘えることが出来ないでいるの?」
料理教室のビルの近くにあるお洒落な喫茶店。それぞれがメニューを注文し終わるとすぐに本題に入る香津美さん、そんなハッキリとしたところも素敵だと思います。
杏凛さんは最初は戸惑っていたようですが、少しずつ自分のことを話し始めてくれました。
「私と匡介さんは、契約で結ばれた夫婦なんです。追い詰められた私にそう提案してくれたのも彼だったのですが……」
「契約結婚ですって!?」
杏凜さんの話を聞いて驚いた様子の香津美さん。そうでした、あの時の匡介さんと杏凛さんの会話を聞いていたのは私だけ。
こんな近くに契約結婚をした夫婦が3組もいるなんて、凄い偶然で……
「はい、私はきちんとそう割り切って判を押したつもりだったんです。ですが結婚後、匡介さんはそんな私を異常なほど過保護に甘やかすようになってしまって。」
確かに、あの日の匡介さんは杏凛さんに対してとても過保護でした。ちょっと羨ましいと思ってしまうほどに。
だけど、そんな匡介さんの変化に杏凛さんはどう応えればいいのか分からないのだそうです。
「それじゃあ、杏凛さんはそんな匡介さんのとる行動を迷惑だと感じているの?」
聞きにくい事でもズバッと聞いてしまう香津美さん。私は二人の様子を見ながらハラハラドキドキしてしまって……