蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
「迷惑……とは思っていません。ただ、彼が契約妻の私にそんなに構う理由がどうしても分からなくて。」
え?それってそんなに難しく考える事なのでしょうか。単純に匡介さんが杏凛さんに好意を持って接しているだけのような気がするのですが。
香津美さんは杏凛さんの話をどう思ったのかが気になって彼女の方を見ると、しっかりと目が合って……小さく頷いた香津美さん、どうやら彼女も同じ事を思ったようです。
多分私たちの考えていることは間違っていないと思います。だけど……それをきちんと言葉にしない匡介さんにも何か理由があるのかもしれないと思うと、私達が勝手に杏凛さんに伝えることは出来ません。
「それなのに、匡介さんはもっと自分に甘えろと言うばかりなんです。今更そんな事言われても、私……そんな時に月菜さんの会話を聞いて、詳しく教えてもらえたらと思ったんです。」
私も初めて柚瑠木さんに甘えてみせて、と言われた時はとても戸惑いました。きっと杏凛さんもそうなのでしょう。
私は香津美さんと一緒に、杏凜さんが上手く甘えられそうな方法を考えたり、自分の経験をもとにアドバイスしたりしました。
そうして女3人、すっかり打ち解けて笑い合っていたのですが……
「……杏凛、約束の時間になったので君を迎えに来た。もう家に帰るんだ。」
時間ピッタリに現れたのはやはり杏凛さんの旦那さんの匡介さん。2人の姿を少し羨ましいな、なんて思って見ていると匡介さんの後ろから……
「時間ですよ、月菜さん。さあ、僕と一緒に帰りましょう。」