蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
「……え、柚瑠木さん?」
突然私の前に現れて、当然のようにその手を差し出してくる柚瑠木さんに私は驚くことしか出来ませんでした。そんな私の手をギュッと掴むと、柚瑠木さんはそのまま私を立ち上がらせて……
「香津美さん、杏凛さん、妻と話をしていただきありがとうございました。それでは僕と月菜さんは先に失礼させてもらいます。」
戸惑った様子の杏凜さんと楽しそうに微笑む香津美さんに頭を下げると、柚瑠木さんはそのまま私を引き寄せて歩き出しました。
そんな私たちの様子をいつから見ていたのか、少し後ろでは聖壱さんが意地悪な笑みを浮かべていて……
少し速足のまま店を出た柚瑠木さん、私は彼に黙ってついて行くことしか出来なくて。
今まで柚瑠木さんが私を迎えに来てくれた事なんてありませんでした。それなのに、急にどうして……?
「あの、柚瑠木さん。もしかして香津美さんから、私を迎えに来るように頼まれたのですか?」
もしそうだとすれば、納得がいきます。匡介さんは杏凛さんを、聖壱さんは香津美さんを迎えに来ていたんですから。
「月菜さんが……言ったので。」
「……え?私が、何ですか?」
柚瑠木さんの小さな呟きを上手く聞き取れず、私は彼に聞き返しました。
「月菜さんは僕に過保護にされてみたい、そう言いましたよね。なので僕も、《《遠慮なく》》そうさせてもらおうかと思って……」