蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
それって、柚瑠木さんも本当は私に過保護にしたいと思っていたって事なのでしょうか?
薄暗い夜道では柚瑠木さんの表情は良く見えません。彼が今どんな気持ちでそう言ってくれたのかを知りたいのに……
「遠慮なんて……しないで欲しいんです。私は柚瑠木さんの妻なのですから。」
今までの二人の関係を考えれば、柚瑠木さんの言う事も分からなくはありません。ですが私たちの距離は確実に近付いているはずなんです。だから、もっと柚瑠木さんの本心を私に見せてくれればいい。
そんな私の思いが通じたのでしょうか?
「ええ。だから今日はそうさせてもらいましたし、これから先もそうします。僕は月菜さんの夫ですから。」
今日の柚瑠木さんは私の事を妻と呼び、自分は夫なのだと言う。何度も繰り返す事で、まるで私にそれをしっかりと自覚させるかのように……
「そうですね、柚瑠木さんは私の大切な旦那様です……」
「……ここからはタクシーで帰りましょう。」
突然そう言いだした柚瑠木さんに手を引かれて、そのまま近くに停車していたタクシーの後部座席へ。いったいどうしたのでしょうか?
「月菜さんが……可愛い事を言うからです。」
「ええっ?それで、なぜタクシーに?」
柚瑠木さんの言葉の意味が分からなくて、ちゃんと教えて欲しいのに。タクシーの後部座席、隣に座っているのに柚瑠木さんはこちらを見ないままで……
「……一秒でも早く部屋に帰って貴女を抱きしめたい。こんな事を考えてしまう僕はおかしいのでしょうか?」