蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
こっちを向いてください、柚瑠木さん。ねえ、貴方がどんな顔をそんな言葉をくれたのか……私に教えて欲しいんです。
「好きなだけ抱きしめていいです。だからお願い……今の柚瑠木さんの顔を見せてくれませんか?」
私に向けられた柚瑠木さんの背中にそっと手のひらで触れると、私のお願いを無視することが出来なかったのか柚瑠木さんは少しだけ振り向いて顔を見せてくれたんです。
普段は無表情で顔色を変える事なんてめったに無いはずの柚瑠木さん、そんな彼の少し照れたようなその表情に……今度は私の方が、彼の事を抱きしめたくなってしまって。
このままでは私も何だか我慢が出来なくなってしまいそうで、私も彼から目を逸らしてしまったんです。
「……貴女にそんな反応をされると、僕でも傷付くんですが。そんなにだらしない顔をしていましたか?」
「そ、そんなんじゃ……」
とっさに目を逸らしてしまったことで、柚瑠木さんに勘違いされてしまって。早く彼の誤解を解かなくてはならないのに、気持ちは焦るばかり。
「そうではないのなら?」
「私が抱きしめてあげたくなってしまったんです、柚瑠木さんの事を!だから……」
柚瑠木さんにきちんと説明するつもりだったのに、頭がパニックだった私は思ったことをそのまま口にしてしまっていて……
「運転手さん、ここでいいです。近くで停めてもらえますか?」