蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
小さな灯りだけ点けられた薄暗い玄関、私はいつの間にか柚瑠木さんとドアの間に挟まれる形になっていて……
訳が分からず、私を閉じ込めている彼をぼんやりと見上げていました。こんな状況の事を誰かが話していたことがあります、それが何という言葉だったのかどうしても思い出せなかったのですが……
「目、閉じないんですか……?」
「……え?あ、はい。」
柚瑠木さんの言葉が意味することが分からなくて、私はそのままの返事をしてしまったんです。そんな私に柚瑠木さんはゆっくりと顔を近づけて……
驚いて目を瞑ってしまった私の唇に、少し温かくて柔らかな感触。それが何かなんて、鈍い私だって分かります。
軽く触れただけですぐに離れてしまった温もりを、少し残念に思ってしまう私は欲張りなのでしょうか?
「柚瑠木さん、なぜ……?」
「月菜さんがなってくれると言ったんでしょう?僕の……特別に。」
柚瑠木さんは少し目を逸らしながらですが、ちゃんとそう言ってくれたんです。それって……私が柚瑠木さんの特別な女性になれたのだと思ってもいいんですよね?
「なります、私が貴方の特別に……!」
勝手に零れ始めた涙を拭う事もせずに、私は迷わず柚瑠木さんの広い胸に飛び込んだんです。そんな私の背中に、彼は優しく腕を回してくれました。