蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


 柚瑠木(ゆるぎ)さんの言う大人のキスが嫌なわけじゃないんです。ただ初めて経験する感覚に、私の頭と心がついていかなくて。
 まるで口内を貪るような柚瑠木さんのキスに私は躊躇いながらも、それでも少しずつ応えるように彼に舌を絡ませてみました。
 おずおずと彼の動きに合わせてみれば、柚瑠木さんはもっと私を求めてきます。
 口の端からどちらのものか分からない唾液が零れて……身体のゾクゾクはもっと増してくるんです。それがなんなのか、私はまだ知らないまま。でもこのキスはとても甘くて、それでいて胸がキュンキュンと苦しい。頭が蕩けてしまいそうになってしまうんです。
 
 それでも慣れない深いキスに、私はだんだん息が上手く出来なくなってしまって……

「ふあっ……は、はあっ……柚瑠木、さん……苦しっ……」

 必死でそれだけを伝えると、柚瑠木さんは口付けを止めて私を優しく抱きしめてくれました。でも彼は小さな声で「危ない……」とだけ呟いて。

「何が危ないんですか?」

「……いいえ、何も。それよりすみませんでした、教えると言ったのにちゃんと手加減出来なくて。」

 さっきは私に「手加減しない」って言っていたのに……
 それなのに私にすまなそうに謝る柚瑠木さんの事が、やっぱりどうしようもなく愛おしくて。


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