蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


 私が大声を出したからでしょうか?柚瑠木(ゆるぎ)さんが腕の力を緩めてくれたので、私は急いで彼の膝の上から逃げ出しました。
 だって柚瑠木さんの膝の上で私は人形のよう動けずにいるのに、彼から優しく髪や肌に触れられ耳元で囁かれたんですよ?
 そんな私の様子をしばらくはポカンと見ていた柚瑠木さんでしたが、彼は私から顔を背けて、口元を手で覆うと肩を震わせていて……

「……もしかして、笑っているのですか?」

 柚瑠木さんが笑ってくれたのはこれが初めてではありませんが、今の彼はとても楽しそうな顔をしていて。

「ふふ……笑いますよ、僕だって。そうやって月菜(つきな)さんがいつも僕を笑わせてくれるから。」

「私が、柚瑠木さんをですか?それって私はいつも柚瑠木さんに、変な事を言ったりしているって事でしょうか?」

 私は周りの人に「天然」だと言われがあり、気付かないうちに変な行動や発言をしている事があるらしいのです。もし、柚瑠木さんにもそう思われ笑われているのだとしたら……

「いいえ、そうではありません。月菜さんがあんまり素直な反応を僕に見せてくれるから……そんな貴女と過ごす時間が楽しくて。」

 そんな反応しか出来ないようにしているのは、柚瑠木さんの方じゃないですか。貴方に驚かされたり焦らされたりで、私は自分を取り繕う余裕なんて無いんです。


< 146 / 237 >

この作品をシェア

pagetop