蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
契約結婚の後一つの理由?
お風呂から上げってもう少しだけ話をして、2人で寝室へ。今日も柚瑠木さんからいつも通りのお願いをされて彼に腕の中で眠りにつきました。
でも私に柚瑠木さんにまだちゃんと聞けないでいることが一つ残っています。その事に私がまだ触れる勇気が無かったから。
やがてすーすーと穏やかだった柚瑠木さんの寝息が、今夜もまた乱れ始めて……
「うっ……いかな……で、おね…い……うあ……あ……いやだっ……!」
苦しそうに身体を丸くし唸る柚瑠木さん、こんな時に私に出来るのは彼を抱きしめることだけで。彼に何かを聞こうとしても話をそらされてしまい、いつもこうして柚瑠木さんの傍にいることしか出来ないまま。
「柚瑠木さん、大丈夫です。私はずっと傍にいますから。」
……でも本当は分かってるんです、彼が「行かないで」と言っているのは私ではない他の誰か。それを知ることが私も怖くてそのままにしているんです。
「……だめ……いかな……ますみ…ん……」
「だめ」「行かないで」そして最後の言葉は「ますみさん」なのでしょうか?柚瑠木さんが毎晩夢に見ている、ますみさんという方はもしかしたら女性なのかもしれなくて。
心臓が痛いほどにバクバクと音を立てています。柚瑠木さんが夢の中でまで引き止める相手、やはりそれって……
今日柚瑠木さんに【特別】にしてもらったばかりだというのに、私の心は不安で揺れていました。