蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
柚瑠木さんが毎晩魘されている事は話さないようにしながら、眠っている彼が「ますみさん」という方の名を口にしたことを話しました。
柚瑠木さんに直接聞く勇気もないのに、こうして香津美さんを頼ってしまう私はなんて狡いのでしょう。だけど、香津美さんはそんな私を心から心配してくれて……
「そうね、月菜さんが不安になってしまうのも無理はないわ。しかしあの柚瑠木さんが寝言で名前を呼んでしまうほどの相手なんて……」
そう、柚瑠木さんはそう簡単に誰にでも心を開くような方ではありません。そんな彼が名前を呼ぶとすれば余程大切な相手しかいないはず。だから私は……
「……ちょっといいだろうか?勝手に話を聞いて申し訳ないと思うが、俺からも少し月菜さんと話をさせて欲しい。」
いつの間にかドアを開けて入り口に立っていた聖壱さん。彼はいつになく真面目な顔をして私達を見ていて。香津美さんはそんな聖壱さんから紅茶の乗ったトレーを受け取りソファーの端に移動しました。
「どうぞ、聖壱さん。私の隣に座って、貴方の話をしてちょうだい。」
「ああ。俺が話しても良いかな、月菜さん。」
香津美さんの隣に腰を下ろした聖壱さんが真っ直ぐに私を見つめてきます。きっと……彼が今から話すのは、柚瑠木さんに関わる大切な話なのでしょう。
「よろしく……お願いします。」
私は一度深呼吸をして、聖壱さんにしっかりと向き合いました。