蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
「……出て行ってしまったのかと思いました、僕を置いて。」
何かに怯えた様な声と震える彼の背中。私がいない事でこんなに柚瑠木さんを不安にさせてしまったなんて。
強く抱きしめられた状態では柚瑠木さんの表情を見ることも出来ないので、少し力を緩めてもらえるように彼の胸を叩くと……
「月菜さんを抱きしめることも、もう駄目なんですか?」
不安に揺れる瞳と額に浮かんだ汗、それらで柚瑠木さんがどれだけ必死に私を探してくれていたのかが分かります。その事を申し訳ないと思いながらも、どこかで嬉しく感じている自分がいて。
彼をそっと引き寄せると背伸びをしてその唇に優しく口付けて、今度は自分から柚瑠木さんの広い胸に頬を寄せます。ここが人通りの多い交差点という事も忘れて……
「私は貴方から逃げませんし、諦めないと言ったはずですよ?だから……そんなに怖がらないでください。」
柚瑠木さんが私を本当の意味での【特別】に出来なかったのは、きっと怖かったからなんですよね?いつかその人が自分の傍から離れて行くかもしれない、そんな不安を抱えたままだから。
……それじゃあ、柚瑠木さんが私の事を信じれるようになるまで何度だって言わせてもらいます。
「柚瑠木さんを置いてどこかに行ったりしません。私は……貴方の妻なのですから。」