蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
「あの頃の僕は周りとの交流を避けて殻に閉じこもってばかりだったのに、真澄さんはそんな事はお構いなしに僕を外に連れ出すような人でした。父や母から頼まれた勉強は二の次で、彼女は僕に色んなものを見せ教えてくれたんです。」
今の柚瑠木さんからは想像も出来ないような子供時代、それを少しずつ変えていったのがきっと真澄さんという存在なのでしょう。
柚瑠木さんの話し方から、彼が真澄さんの行動に戸惑いながらも少しずつ心を開いていったことがなんとなく分かりました。
「真澄さんはどこに僕を連れ出す時も、いつも必ず手を握ってくれました。僕が何度恥ずかしいから、と言っても彼女はこの手を離したりしなかった。いつの間にか僕もそれが当たり前になっていて、気にしなくなるほどに……」
知りたいと思っていた柚瑠木さんと真澄さんの事なのに、2人の親密な関係を聞けば胸が苦しくなる。そんな自分をどうしていいのか分からないまま。
もしその頃の柚瑠木さんに私が出会えていたら……そんな事を考えても、私では真澄さんの代わりにはなれないのに。
「柚瑠木さんにとって真澄さんは……いえ、続きを話してもらえますか?」
もし私が柚瑠木さんの立場だとしたら、真澄さんに恋心を抱いてもおかしくはありません。でもそんな事を聞く勇気は私には無かったのです。