蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
契約結婚を終える時には…


 柚瑠木(ゆるぎ)さんは私の手を引いて部屋を出ると、鍵をかけてそのまま駐車場へと向かいました。
 助手席のドアを開けて私を座らせると、彼はそのまま運転席へ。ドアを閉めてシートベルトを締めると、柚瑠木さんは車を発進させました。

「……僕が真澄(ますみ)さんの居場所を聖壱(せいいち)に調べてもらっていた事、黙っていてすみませんでした。」

「いいえ、なんとなく柚瑠木さんは知っているのではないかと思っていましたから。」
 
 真面目な柚瑠木さんが、あの事件の事で真澄さんに謝りたいと思うのは当然だと思ったんです。でもきっとその勇気が出ないまま、聖壱さんに預けたままになっていたのではないでしょうか。
 もし柚瑠木さんがその一歩を踏み出す事の手伝いを出来たのならば、それだけで私が傍にいて良かったと思えます。

「真澄さんのところまで遠いのですか?柚瑠木さんも疲れているのならば明日にした方が……?」

 そう言うと、柚瑠木さんはなぜか私をジッと意味深な瞳で見つめてきて。私はどうして、柚瑠木さんから恨みがましい目で見られているのでしょうか?

「さっき言いましたよね、今夜貴女を妻にすると。僕は今すぐにでもそうしたいと望んでいるのに、月菜(つきな)さんはまだ僕に我慢しろと……?」

 柚瑠木さんの言葉の意味を理解すると同時に顔が真っ赤に染まります。彼がこんな風にはっきりと言う人だったなんて思ってなくて。


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