蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
柚瑠木さんはそのマンションを確認した後、近くのパーキングに車を停めてました。少し緊張しているのか、彼は俯くと一度目を閉じて静かに息を吐きました。
私はそんな柚瑠木さんを黙って傍で見ている事しか出来ません。ですがゆっくりと顔を上げた柚瑠木さんは、今までよりもしっかりと前を向いているように感じました。
「……では、行きましょうか。」
運転席のドアを開けて車を降りた柚瑠木さんは、いつものように私の座る助手席のドアを開けてくれるました。
夫である柚瑠木さんからまるでお姫様扱いされているようで、まだ慣れないのですが。
……だけど今夜はいつもと違うことが一つ、ドアを開けて柚瑠木さんが私に手を差し出してくれたんです。戸惑いながら彼の手に自分の手を重ねると、そのままギュッと握られて。
片手でドアを閉めると、私と手を繋いだまま柚瑠木さんはマンションに向かって歩き出しました。
「柚瑠木さん、いいんですか……?」
確かに柚瑠木さんの妻は私ですが、真澄さんの前で本当に彼と手を繋いでいてもいいのかと。そんな事を心配する私に呆れたのか彼が振り返り、その手が離されてしまったんです。
でもすぐに今度は指を絡めるようにしっかりと繋ぎなおされて……
「車に戻るまで、この手を一度でも離したら許しませんから。」