蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


 結局お料理のほどんどは希子(きこ)さんが作ったようなものでしたが、ポトフは私が作らせていただきました。一緒にお掃除をしながら、少しだけ柚瑠木(ゆるぎ)さんの子供の頃のお話も聞かせてもらいました。

「柚瑠木坊ちゃんは昔からとても頭のいい子で、私に見せてくれるテストはいつも100点ばかりでした。」

「そんな感じですね。初めて会った時、とても聡明な方なのだろうと思いましたし。」

 まだ結婚したばかりとはいえ、柚瑠木さんが私に見せてくれる顔は何の感情も読めない冷たい顔……けれども初めて会った時から、彼には完璧なほどの知性と品位が兼ね備えられているのだと感じていました。

「奥様は柚瑠木坊ちゃんの内面まで見て下さってるんですね。」

「まだまだ彼の事は分からない事ばかりです、これからも希子さんに色々教えていただけると嬉しいです。」

 ペコリと頭を下げると、慌てた希子さんに「頭を上げてください、奥様」と言われてしまいました。

 希子さんが帰って私はリビングで柚瑠木さんが帰ってくるのを待ちました。何時に帰ってくるか聞いておけばよかったかもしれません。
 仕事の邪魔にならないように「帰りは何時になりますか?」とだけメッセージを送ってみました。

 すぐにスマホに柚瑠木さんから返事が来て、私はメッセージを急いで開きます。

『少し遅くなります。月菜(つきな)さんは先に休んでていいですから。』

 せっかく希子さんにお願いしてお料理も作りましたし、夫の顔を一度も見ないで先に休むわけにはいきません。

『いえ、柚瑠木さんが帰られるまで起きて待っていたいのです。』

 そう返信したのですが、その後柚瑠木さんからメッセージは送られてはきませんでした。

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