蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


 ソファーに座ってジッとしてみたり、キッチンとリビングを行ったり来たりしたり……
 時計を何度見ても柚瑠木(ゆるぎ)さんはなかなか帰ってきません。送ったメッセージには既に既読マークがついているのですが。

「電話をしてもいいでしょうか?いいえ、お仕事の邪魔になるといけませんよね。」

 スマホを出して画面を何度も見つめてしまいます。けれど用件が無ければ、お仕事の最中に電話をかけては迷惑でしょうし……
 柚瑠木さんは二階堂財閥の御曹司です。彼は既に重要なお仕事を任されていると聞いています。もしかすると忙しくて返事も出来ないのかもしれません。

「私に出来る事は待つことです!」

 そう言って眠気覚ましにコーヒーを淹れようとすると、カチャリ……と玄関の扉が開く音がしました。私は慌てて玄関へ。

「柚瑠木さん、おかえりなさい。」

 笑顔で柚瑠木さんをお迎えしました。ですが彼は少し困ったように顎に手を当ててしまったのです。

「なぜこんな時間まで起きているんです、月菜(つきな)さんは先に眠っていていいと言ったでしょう?」

 私が言う事を聞かなかったから、柚瑠木さんは怒っているのでしょうか?けれど私にだって私の考えがあります。なんでも柚瑠木さんの言う通りにばかりは出来ません。

「一日に一回は柚瑠木さんの顔を見たくて……それじゃダメ、でしょうか?」

 契約とはいえ結婚しているのに、一緒に暮らしているのに顔を見れない関係だなんて私は嫌なんです。


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