蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


 相手の事を大切に思うからこそ、いつまでも自分を責め続けてきたのは分かります。でもこうして再会してお互いに全てを打ち明けることが出来たのなら、後は前向きにこれから先の事を考えるべきだと思うのです。
 そうでしょう?というように柚瑠木(ゆるぎ)さんに柔らかく微笑みかけると、彼もゆっくりと頷いて……

「あの日、真澄(ますみ)さんは僕の発表会を見に来ようとしていた。自分との約束を破ったわけじゃない、それを知ることが出来て良かったです。僕はずっと人を信じることが怖かったけれど……」

 真澄さんと話していたはずの柚瑠木さんの視線が、今度は私の方へ向けられて。顔を上げると、柚瑠木さんは愛おしそうに私を見つめて微笑んでいて……

月菜(つきな)さんなら信じたいと思えたんです、彼女となら一緒に同じ未来を見てみたいと。過去を受け止めることで、これからは素直に心から妻を愛することが出来ると思います。」

「柚瑠木さん……」

 私がずっと彼の傍で言い続けた言葉は無駄ではなかったのですね。決して溶けない氷のようだった柚瑠木さんの心も、こうして温かなものへと変わっていくのです。
 そんな柚瑠木さんからの言葉が嬉しくて、ポロポロと涙が零れ落ちます。真澄さんの前だというのに……


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