蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


 私に回された彼の腕にそっと自分の手を重ねて……ずっとこのままでいいと思えるほどの幸せな時間を過ごすことが出来るんです。
 きっと今は柚瑠木(ゆるぎ)さんも同じように想ってくれているはず、そう信じることが出来るんです。

「……このままでもいいんですが、僕の理性が持たなくなりそうです」

 そう言って首元に寄せられた柚瑠木さんの吐息がくすぐったくて、思わず首を竦めてしまいます。そんな私を柚瑠木さんはそっと腕を放して解放すると、ちょうどお風呂の湯はり完了を知らせる音楽が鳴って……

「先にどうぞ、月菜(つきな)さん。ゆっくりしてきてください、と言いたいところですが……あまり僕を待たせないでくださいね?」

 なんて甘えたように言われて、私はコクコクと頷いて急いで部屋から着替えを用意してバスルームへ。今の柚瑠木さんとの距離が嬉しい、彼のくれる言葉全てにドキドキが止められなくて……
 慌てて用意した下着とパジャマを籠に置き急いで着ている服を脱ぐと、柚瑠木さんから貰った入浴剤を手にして浴室に入りました。

 落ち着かなくては、と思ってもなかなか落ち着ける状態ではなく。それでも柚瑠木さんに少しでも満足してもらうため、丁寧に身体を磨き手入れを済ませました。
 柚瑠木さんの貰った入浴剤を湯船に入れると、湯は薄ピンクに染まり綺麗な花弁が浮いてきます。

「綺麗、いい香り……」

 ローズの香りがする湯船にゆっくりと身体を沈めて、両手で花弁を掬います。するとあれだけ落ち着かなかった心が少しずつリラックスしていくのを感じます。
 とても気持ちが良いです……


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