蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


「今から彼らに電話をかけて「助けて欲しい」とお願いしてください。これくらいの事は、出来ますよね?」

 そんな……私がちゃんと注意しなかったばかりにこんな風に掴まってしまったのに、柚瑠木さんまで迷惑をかけてしまうのは嫌です。
 つまりこの人達は私達を、柚瑠木さん達との交渉用の人質にするためにここに連れて来たという事なんですよね?これは犯罪なのではないのでしょうか……?

「……聖壱さん達に助けを呼ぶだけでいいのかしら?」

 そんな!香津美さんは真剣に男性を見つめていますが、私にはそれだけで済むとはとても思えませんでした。きっとこの人達は私達を使ってとんでもない要求するはずなんです。

「よく分かっていらっしゃる、もちろんこちらも、大事な奥さんをタダで返してあげる訳には行きませんからね。」

「そんな、私が迂闊だったばっかりに柚瑠木さん達に迷惑を……?」

 やっぱり……どうすれば柚瑠木さん達に迷惑をかけずにすむでしょうか?香津美さんのこともここから逃がしたいのです、私に出来る事は何かないのでしょうか。
 こんな風に弱く震えているのはもう嫌なのに……

「落ち着いて、月菜さん。柚瑠木さんはこんな事であなたを責めたりしないわ。今は何も考えちゃ駄目よ。」

「はい……」

 私の事を優しく撫でてくれる優しく手のひら、心強さを感じる声……香津美さんは本当に素敵な女性だと思います。
 少し安心して彼女を見上げると小さく口を動かして「大丈夫だから、私を信じて」と……もしかして彼女は何か特別な考えがあるのでしょうか?


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