蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
私が香津美さんの言葉に頷くと彼女は安心したように微笑んだ後で、テーブルの上にあるスマホを一つ手に取りました。指でスマホを操作し何かを確認した後で香津美さんはこう言ったのです。
「私が聖壱さんに電話をかければいいんでしょう?」
スマホの画面を彼らに見せるようにして香津美さんは狭山さんに電話をかけました。通話音もちゃんと聞こえるようにスピーカーに切り替えて……
そんな香津美さんの様子をしっかりと確認しながら、リーダー格の男性は彼女に指示を出し始めました。
「物わかりの良い女性で助かります。まず最初は、貴女が聖壱君に助けてもらうように頼んでくださいね?」
「……分かったわ。」
男性は余裕の笑みを浮かべ、煙草を口に咥え深く吸い込み煙を吐き出し始めたのです。こんな人たちに良いように利用されるなんて……そんなの絶対に嫌なのに。
こんな状況なのに香津美さんに甘え何もできないでいる自分が歯痒いんです。私はいったいどうすれば……?
『プルルルル……プルルルル……プルルルル……もしもし?』
数回のコール音の後、狭山さんが香津美さんの電話に出たのが分かりました。
その瞬間、香津美さんの表情が少し和らいだように見えて、そんなお二人の関係が少し羨ましいとも思いました。