蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
「もしもし、聖壱さん?私……香津美だけど、分かる?」
『ああ、こんな昼間にどうかしたのか?それにこの番号は……?』
香津美さんはリーダー格の男性に怯えているのか、チラチラと彼の確認しながら狭山さんと会話を始めました。
そんな香津美さんの様子を満足そうに眺める男性も、周りの人も本当に酷いです。こんな事をしてこの方たちは本当に満足なのでしょうか?
「あの、聖壱さんに頼みがあって電話をかけているの。お願い、聖壱さん。私を……助けて?」
狭山さんに助けを求める香津美さんの心細そうな声を聴いて、私はもっとしっかりしなくてはと思いました。きっと私が震えてばかりいたので彼女に無理をさせていたに違いありません。
『助けて?それはどういうことなんだ、香津美!?』
狭山さんも電話口で焦っているようです。2人は心を通わせこんなに想い合っていらっしゃるのですね。
それなのにそんな二人の会話を「計画通り」と言わんばかりの笑みを浮かべて聞いているこの人達は……!
「あのね、聖壱さん。私は今、捕まっていて……きゃっ!」
香津美さんが話している最中だったのに、男性がいきなり彼女から電話を取り上げ、香津美さんをソファーへと押し戻しました。私は急いで香津美さんの身体を支えて起こします。
なんて事をするのでしょうか、自分が電話をするように言っておいて。
「……もういいだろう。狭山 聖壱君、君の大事な奥さんが今どういう状況なのかは分かってもらえたかな?」
リーダー格の男性は、香津美さんから取り上げたスマホで狭山さんと話し始めました。彼は「これ以上余計な事は喋るな」という目で私達を見ています。
やはり私達は柚瑠木さん達を誘き寄せる餌でしかないのでしょうか。
『その声……っ!アンタはまさか眞二叔父さんなのか……!?』
狭山 眞二?聞いた事のあるお名前です。
確かSAYAMAカンパニーの常務を務めていらっしゃる方の名前だったような気がするのですが……まさかこの方が?