蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


「……柚瑠木(ゆるぎ)さん、また私には何も言ってくれなかったんですね?」

 私の事でもあるのに黙っていた柚瑠木さんにちょっとだけ怒りを感じ、私よりずっと背の高い彼を下から睨みます。
 そりゃあ私なんかが怒っても怖くないかもしれませんが、少しくらいは「腹が立っている」という意思表示をさせてもらいますから。

「いえ、月菜(つきな)さんに話せば余計に気にしてしまうかと思ったので。聖壱(せいいち)達にはきちんと僕から話しましたし……」

 もちろん柚瑠木さんが私の事を考えての事だというのは分かります。
 ですが私だって2人へのお礼の言葉くらい自分の口で言いたいんです。そういう気持ちを、柚瑠木さんにも分かって欲しいんです。

「柚瑠木さん、私が言いたいのはそういう事では無くて……」

私はこの時、柚瑠木さんに自分の考えを伝えることにいっぱいで、狭山(さやま)夫妻が私たちの事を微笑ましい目で見ていることになんて気付くわけがなくて……

「まあまあ、喧嘩は二人の時にゆっくりとやってちょうだい?それより月菜さんが甘いものが好きと聞いていたのでお菓子を用意しておいたの。2人でお茶を飲みながらゆっくり話しましょう?」

「え?でも……柚瑠木さんと聖壱さんは?」

 香津美(かつみ)さんのその言い方だと柚瑠木さんと聖壱さんは一緒ではないみたいですけれど、いったい二人はどうするのでしょうか?

「そう言えば聖壱さん、久しぶりに身体を動かしたいと言っていたわよね?柚瑠木さんとジムにでも行って来たらどうかしら。」

「ああ、そうだな。柚瑠木、行くぞ。」

 そう言うと聖壱さんは納得してない様子の柚瑠木さんを引っ張って連れて行ってしまったのでした。


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