蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
柚瑠木さんはベッドに横たわり本を読んでいたようで、私が寝室に入ると同時にチェストに置かれたスタンドの灯りを消しました。
常夜灯だけになった部屋、私は静かにベッドの中に入ります。
いつも自分から彼に抱きしめてくださいなんていう勇気はなくて……こうして目を瞑って待っているんです、柚瑠木さんから声をかけられるのを。
「……月菜さん、今夜も抱きしめさせて?」
一日で一回だけ、彼が敬語を崩して私に甘えてくれる瞬間。この時はいつも胸がギュッと苦しくて、だけどどうしようもなく嬉しくもあって。
きっと私が柚瑠木さんの事を特別に想っているから、こんなに苦しくて嬉しいのだと思います。
「もちろんです、私で良ければ思いきりどうぞ?」
柚瑠木さんはいつも、私が返事するまでは決して私に触れようとはしません。私を抱きしめる時、柚瑠木さんはどんな気持ちなのか……少しだけ気にはなっていますが。
私の傍へと移動して、優しく私の身体を包み込む柚瑠木さんの腕。そんな彼の胸に顔を埋めて私は静かに目を閉じます。
「痛くありませんか、月菜さん。」
「大丈夫ですよ、こう見えても結構丈夫なんです。」
そう言うと柚瑠木さんが少しだけ腕の力を強めました。彼はきっと眠りにつくのが不安なんだと思います。
柚瑠木さんのために私に何かできることがあればいいのですが……