蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
私も柚瑠木さんの背に腕を回し、抱きしめ合う形になります。この方が柚瑠木さんに落ち着くのだと言われたので。それに私もこのほうが彼の心臓の音が聞こえてきて安心できますから。
目を閉じて柚瑠木さんの規則正しい呼吸音を聞きながら、私はいつも眠りにつくようになりました。
ですが多分今日も……
「う…あ……って……よ、せ……い…ど、して……っあ、あ…」
柚瑠木さんは私から手を離し、胸元を掻きむしり苦しそうにしている。
やはり今夜も……柚瑠木さんは魘され始めてしまいました。
あの事件の日、初めて夜中に彼が魘されているのだと知りました。あれから毎日私は柚瑠木さんと一緒に眠り彼の様子を見てきましたが……
「毎晩魘されているだなんて、だから柚瑠木さんは私と寝室を別にしていたんですね……」
そっと柚瑠木さんの手に自分の片手を重ね、空いた方の手で彼の額を撫でる。私には毎晩魘されている柚瑠木さんに何か特別な事はしてあげられませんが……傍に私がいるんだという事だけ、それだけ伝わればいい。
柚瑠木さんがどんな夢の中にいても、私は貴方の手を離したりはしませんから。
柚瑠木さんと一緒に眠るようになって、やはり彼の悪夢の原因がなんなのか気にはなっているんです。けれど柚瑠木さんはその事を聞こうとすると必ず話を逸らしてしまうので……