蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
「あっ、さっきのご夫婦ですね。」
驚いている様子の香津美さんに、この二人がさっき話した夫婦なんですと伝えました。やっぱり私達と同じ料理教室の生徒さんだったみたいです。
「夫の俺が君の心配をするのがそんなに迷惑か?この日のために残業まで調整してきたのに。」
まあ随分過保護な旦那さんなのですね、奥様だって子供じゃないんですしそこまで心配しなくても……ほら、困った顔をされているじゃないですか。
「そういう事じゃなくて、私は自分で出来る事を探したいと言ったはずです。それなのに匡介さんがここまでついて来てしまっては意味が無いんです!」
どちらも自分の考えを押し通すつもりなんでしょうか?ここが二人の家ならばそれもいいでしょうが、周りには生徒さんがどんどん集まって来ていますし……
どちらかだけでも少し冷静になってくれるといいのでしょうけれど、言い合う二人にはそんな余裕はなさそうです。
「だから、俺は君が大丈夫だと分かれば……」
「あなた達は何を騒いでいるんですか?確か今日から新しく入会された鏡谷さんですよね。」
私たちの後ろから大きな声で2人の喧嘩を止めたこの方は……?
それにしてもこの男性が鏡谷 匡介さん?私が聞いた話では鏡谷 匡介さんは鏡谷財閥の御曹司、そしてもの凄く仕事が出来る方だという事。
ただ……少なくとも彼がとても心配症でこんなに妻に対して過保護だとは、今まで聞いたことが無かったのですけれど。
「確か入会するのは奥様の杏凛さんだけと聞いてますが。旦那さんはどうしてここに……?」
ああ、この男性は料理教室の先生だったんですね。まさかこんなに若くてカッコいい男性がお料理教室の先生だなんて。