蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~
「すみません、今日から妻がお世話になるので挨拶をしておこうと思いまして……」
鏡谷さんは料理教室の先生が若い男性だと分かると、言葉遣いは丁寧でしたがあからさまに態度を威圧的なものに変えて……
嫉妬するのがいけないとは言いませんが、これでは奥さんの杏凛さんは大変なのではないでしょうか?
そんな鏡谷さんの与えるプレッシャーを物ともせず、先生は彼の前に立ちハッキリと言いました。
「それは分かりましたが、もう授業が始まります。旦那さんも一緒に受けられるんですか?」
「……いえ、彼はすぐに帰りますから。もういいですよね、挨拶が終わったんだからもう帰ってください!」
二人の険悪な雰囲気に焦ったのか、杏凛さんは鏡谷さんにそう言うと彼の背を押して教室の外へと追い出してしまいました。
それにしても、この二人は来るたびにこうして喧嘩をする……なんてことはありませんよね?少し不安です。
「では手前のホワイトボードに皆さんの名前を書いてますので、その調理台に並んでもらっていいですか?」
先生に言われて、私は香津美さんとホワイトボードを確認しました。今日の私は運がいいみたいです、香津美さんと同じグループになれました。
そしてもう一人、同じグループのメンバーとして書かれていたのは……
「もう一人は鏡谷 杏凛さんですね。」
「そう……みたいね。」
まさか杏凛さんも同じグループだなんて、ちょっとだけ驚きました。ですが既に調理台の横に立っている彼女は何だか寂し気で……
もしかしたらきちんと話をすれば彼女とは仲良くなれるかもしれない、私はそう思ったんです。