甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
「月菜さんは、柚瑠木さんからすべてを聞いて、これからどうするのかしら……?」
何も知らないまま、事件に巻き込まれた月菜さん。
彼女が自分は囮になるための結婚相手だったと知って、柚瑠木さんを今までと同じように信頼できるとも思えない。
「柚瑠木からはまだ月菜さんが目覚めたという連絡はないが、今夜は彼らも隣の部屋を取っている。」
「二人はこの隣の部屋……じゃあ、ここは……?」
確かにここは聖壱さんと二人で暮らすレジデンスの部屋ではない。私は初めて見る部屋だった。
「ああ、2人とも気を失ったからな。俺と柚瑠木はこのホテルの部屋を取ったんだ。」
「……そう、だったの。運ぶの大変だったでしょう、迷惑かけたわね。」
私は月菜さんのように小柄でもか弱くもない。女性としては背が高い方だし、ここまで運ぶのは楽じゃないはず。なのに聖壱さんは……
「俺のために倒れるまで頑張ってくれた妻を迷惑だと思う夫はいないだろ。それに《《あの時》》の香津美の言葉も嬉しかったしな。」
「あの時……?」
いったいどの時の言葉なの?私はなにか聖壱さんを喜ばせるようなことを言ったのかしら?
気を失う前は、狭山常務への怒りの所為もあり、感情的になっていたのでよく思い出せない。
「……香津美は皆の前で俺の事を『私の大切な夫』って言ってくれただろ?あれ、マジで嬉しかった。」
聖壱さんの言葉で自分の言葉を思い出して、顔が熱くなる。そうだわ、私は確かに聖壱さんのことをそう言ったの!
でも、その時の気持ちに嘘なんてなかった。あの時の言葉は間違いなく私の本心で……