甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
契約の終了と甘い夜


 聖壱(せいいち)さんに姫抱きされたまま、タクシーに乗せられてしまい恥ずかしくてどうにかなってしまいそうよ。
 私は背が高いし決して軽い方ではない、それにちゃんと歩けるのだから降ろしてくれればいいのに。そう思うのに私を抱いて嬉しそうな顔をしている聖壱さんに「降ろしなさいよ!」とも言えなくて……

 しばらくするとタクシーの窓には見慣れた景色が……ああ、ちゃんと【ベリーヒルズビレッジ】に戻ってくることが出来たのね。やはり不安もあったんだと思う、自分の居るべき場所を再確認してちょっとだけホッとしたの。

 けれどタクシーは私と聖壱さんの部屋があるレジデンスではなく……なぜかオフィスビルの前に停車する。そのまま聖壱さんがカードで会計を済ませるとタクシーのドアが開けられる。
 私を抱いたままオフィスビルの中へと歩いて行く聖壱さんに私は「降ろして欲しい」と頼んだけれど、彼は笑うだけで少しも私の言う事を聞いてくれないのよ。
 
「……沖名(おきな)、頼んでいたものはどうなった?」

 ロビーで立っていた沖名さんに聖壱さんが声をかける。沖名さんは聖壱さんに抱き上げらた私をチラリと見たが何も言わない。職場の人にこんな姿を見られるだなんて……次からどんな顔をして仕事に行けばいいのよ、聖壱さんの馬鹿!

「これでいいんですよね?凄く大変でしたよ!まったく……今回だけですからね?」

「ああ、サンキューな。じゃあ今日は帰ってゆっくり休んでくれ。」

 頼んでいた物って、聖壱さんが彼と電話で話していたことよね?
 沖名さんから何かカードのようなものを受け取ると、聖壱さんは沖名さんにお礼を言って今度はエレベーターへと向かった。


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