甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
エレベーターに乗り込んで押された階数は52F、それは高層フロアで、私達の働いているオフィスゾーンとは違う。じゃあ高層フロアにあるのって、確か……
エレベーターの扉が開くと同時に、速足で歩き始める聖壱さん。入口の受付も一言で済ませて、目的の場所でであろう一番奥の客室のドアを開ける。
そうだ、オフィスビルの高層フロアの半分はホテルだったんだわ。でもここはセレブや有名人なんかに大人気で半年先まで予約でいっぱいだと聞いたのに。
聖壱さんは窓の傍のベッドにそっと私を降ろした。高層フロアから見える【ベリーヒルズビレッジ】周辺の夜景に、私の目はくぎ付けになる……このビルには展望台もあると聞いていたが、これだけ美しい夜景が見れるのならきっと評判もいいでしょうね。
「けれどこのホテルの部屋を聖壱さんはどうやって……?」
「ああ、さっき沖名に頼んだって言っただろ?アイツはこのホテルの経営者の関係者だからな。まあ、さすがに急すぎて怒られたが。」
聖壱さんは笑っているけれど、このホテルの部屋を取るのが簡単じゃないことくらい私だって分かる。値段だってセレブの間でも、それなりなんだと聞いたことがあるもの。
「私みたいな性悪女にそこまでしなくても……」
いいのに、という言葉の続きは温かな彼の唇に塞がれて言わせては貰えなかった。背中に回された腕も力強くて……
「……するよ。香津美はそれだけの事をする価値のある女だ、俺にとってはな。」
そっと離れた唇、私を見つめる真剣な聖壱さんの眼差し。
彼は本当にそう思ってくれているようで、私はこれほどまでに聖壱さんに愛してもらっていいの?