甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~


 揺らめく世界の中で、私は妹とその想い人を仲違いさせようと悪だくみしていた。
 もしかしてこれは夢?いいえ、これは間違いなく私が妹たちにしてしまったこと。
 私が欲しいと思ったものを「何にも興味ないです」という顔をして、奪っていく妹をとても憎らしく思った。その人はもともと私の見合い相手だったはず、取り返してやろうと思ったのよ。

 だけど、結果私は二人の想い合う姿を、嫌というほど見せつけられただけで……

 再会できた時の二人、すごく嬉しそうだった。奥手な妹が相手に泣きながら抱きついて……私は自分だけの我が儘で、妹たちにとても酷い事をしたのだと気付いたの。

「……ごめんなさい。」

 あの時はちゃんと謝る事が出来なかったけれど、ずっと2人に謝りたかったの。

「何を謝っているんだ?」

 誰の声だろう?柔らかな世界に聞きなれない優しい声。

「酷い事をしたの。私は自分のことしか考えず優しい人たちをひどく傷つけたの。」

 誰だか分からないから、本音を話す事が出来る。無駄に高いばかりのプライドを脱ぎ捨てて、本当の香津美として。

「そうか……」

 優しい声の主は、それだけで私を責めもせずただ優しく頭を撫でてくれた。大きくて暖かい……とても優しい手のひら。もしかして私を慰めてくれているのかしら?


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