甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
「聞いてもいいかしら、私にはあなたが今何をしているのかが理解出来ないんだけれど?」
私の目の前で卵を握りつぶしているこの男はいったい何を考えているのかしらね?いくらお金が余っているからってわざわざ食べ物を生ごみにする必要はないと思うのよ。
「何って、料理に決まってるだろ?香津美はちゃんと目が見えているのか?」
ええ、ちゃんと見えているわよ。見えているからこそ聞いたんじゃないの、その惨状は何なのかってね。
私もあまり料理が上手な方ではないけれど、これはあまりにも酷すぎるわ。よく「朝食は俺が作ってやる」なんて言えたわね。
「少なくとも、私が育ってきた家ではこんな物は料理とは呼ばなかったわね。」
聖壱さんから卵を取り上げて、慣れない手つきで割ってフライパンに落とす。簡単な料理くらいは家に来ていた家政婦から教えてもらっていたから出来るはず。
「香津美は料理が出来るのか?俺はてっきり……」
出来ないと思ってた、って言いたそうね。確かに得意とは言えないけれど簡単なものくらいなら作れるわよ。
「少なくとも聖壱さんよりはましなものが作れると思うわよ?味の補償はしないけどね。」
「いや、香津美が作ってくれるとは思ってなかったからかなり嬉しい。」
何よ、それ。聖壱さんはモテるんだから、今まで料理くらい沢山の女性に作ってきてもらってるでしょう?こんな子供が作るような料理で嬉しいなんて……