甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
渡された紙をそっと開いて読んでみる。
大体の内容は……会社が軌道に乗るまでは夫の聖壱に協力すること。聖壱は香津美に対してきちんと給料は払うこと。外では夫婦円満にふるまう事。結婚生活が辛くても5年は夫婦でいる事。
……五年後、両者が結婚を続ける気が無ければ、契約終了する事。
なるほど、あくまでビジネスに近い結婚を望んでるという事ね。いいじゃない、私もこのくらいはっきりしていた方が都合が良いわ。
「どうする?香津美。」
「いいですよ、このお話……受けようと思います。」
いきなり呼び捨てとか、もう好青年なんて言葉はどこかに飛んで行っちゃったわよ。
「香津美、ちょっと来い。」
いきなり肩に腕を回され抱き寄せられる。実は男性経験のない私、驚いてカチンコチンに固まってしまう。
「カメラに向かって微笑んでろ。」
抱き寄せられてまま、聖壱さんのスマホで写真を撮られる。何のためにそんなものを……?
「狭山さん、貴方いったい何を?」
「関係者に見せるのに写真があれば便利だろう?早速俺の両親や岩崎社長にも送っておく。見合い、上手くいきましたってな。もう、後戻りはできないぜ?」
狭山さんはさすがにやり手な若社長なだけある。あっという間にこのお見合い話も進めてしまった。なんだかうまく利用されたような気がして、気分が悪いわね。
「後戻りするくらいなら、この話も最初から受けてないわよ。」
「ふん、まあいい。この結婚は契約結婚のようなものだ。アンタもそれを十分理解して俺のところに来るんだな。」
それだけ言うと、狭山さんは一度も椅子に座ることなく部屋から出て行ってしまった。