甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
「柚瑠木さん……どうしてここに?」
聖壱さんとばかり思って開いたドアの向こうに立っていたのは、聖壱さんの幼馴染で仕事仲間の二階堂 柚瑠木さん。
「こんばんわ、香津美さん。今日は聖壱に呼ばれてここに来たんです。」
彼は前会った時と変わらない無表情で私に挨拶をした。柚瑠木さんの氷のように冷たい瞳に見つめられるのは、少しだけ怖い。
「聖壱さんが……?」
柚瑠木さんの言葉を聞いて驚いた。どうして?今日は私たち二人で大切な話をするんじゃなかったの?何故聖壱さんが柚瑠木さんをここに呼んだのかが分からない。
「ええ。彼、貴女に全てを話すつもりなんですね……正直、僕は驚きました。」
柚瑠木さんの言う全てというのは、きっと聖壱さんの身内のゴタゴタの事でしょうね。でもその事と柚瑠木さんと何か関係があるのかしら?
「驚くって……どうしてですか?」
私と聖壱さんは夫婦なのよ?夫が妻に隠していたことを話す事がそんなに驚くような事かしら?それも、こんなに冷静沈着そうな柚瑠木さんが?
「聖壱はこの結婚をきちんと契約だと割り切れていると思っていました。少なくとも今までの彼はそういう男でしたから。だから僕達は――――」
「柚瑠木、香津美に余計なことまで話さなくていい。」