甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
聖壱さんがそんなにまで私の事を想ってくれていたなんて。きっと幼馴染の柚瑠木さんとの約束を破る事なんて今まで無かったのでしょうに。
「ちっ、柚瑠木が余計なことまで香津美に話すから、この事は隠しておきたかったのに……」
聖壱さんはそう言うけれど、私は知れてよかったと思うの。この人のためならば私だって頑張れる気がするから。
「聖壱さんの気持ちは嬉しいわ。私その程度の事では離婚する気はないけれどね。」
ふふふと笑ってみせると、聖壱さんはテレたように頭を掻く。柚瑠木さんは私たちのそんな様子を冷たい目で見ているだけだけど。
「話を戻していいですか?香津美さんは今までの話を聞いてもまだ囮になってもいいと言えますか?そうでないのなら、これ以上は話すことは出来ないので。」
冷たい言い方しかしないけれど、柚瑠木さんはキチンと私の意思を確認してくれる。私がなんて答えるかを聖壱さんは心配そうに見ている。
聖壱さん、いつも貴方の言う事を聞かない妻でごめんなさい。
「ええ、やってやろうじゃないの。私は夫の問題を知らんぷりできる妻になろうとは思っていないのよ。」
私がそう言うと柚瑠木さんは静かに頷き、聖壱さんは困ったような顔をして額に手を当てた。