甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~

「キスしていいなんて言ってないのに……」

 「どうぞ」とばかりに目を閉じたくせに、終わってみれば口から出てくるのはいつもの可愛くない言葉ばかり。素直な気持ちを言葉にするのは私にはまだまだ難しいみたい。

「どう見ても合意の上のキスだったと思うが?」

 そんな私を楽しそうに揶揄う聖壱さん。やっぱり目を閉じるんじゃなかったかしら?
 でもさっきは何となく私も彼とキスをしたいと思ったの。少しだけ彼の熱を感じたいと……

「それに……この問題が解決したら、俺は香津美と本当の意味で夫婦になりたいと思っているしな。」

 そっと耳元でそう囁かれて、顔が熱くなるのが分かる。この人は私の全てを本心で欲しがっている、なぜか私はもう聖壱さんから逃げることは出来ないような気がした。

「でも、私達は契約結婚だから……っ!」

 私達は5年後に離婚するという決まりだったでしょう?その方が聖壱さんにとって都合が良いんじゃないの?

「契約結婚から本気になってはいけないという決まりでもあるのか?俺はもう香津美を逃がしてやる気なんてないぞ?」

「だって、そう決めたのは聖壱さんの方なのよ?それなのになぜ……?」

 分かってる、こんな事を言っても聖壱さんは自分の考えを押し通すに決まってる。強引で俺様な彼に私は結局勝てないでいるの。

「香津美が囮の件で傷付いて俺と一緒に居たくなくなるだろうと思ったが、もうその考え方は止めた。香津美の事は全て俺が受け止める。」


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