甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~


「そんな、私が迂闊だったばっかりに柚瑠木(ゆるぎ)さん達に迷惑を……?」

 何も知らない月菜(つきな)さんは自分で自分を責めてしまい、今にも泣きそうな顔をしている。だからあれほど月菜さんにも事情を話すべきだと言ったのに!
 けれどいまさらそんな事を言っても仕方ない。私は、今の自分に出来る事をするしかないのだから。

「落ち着いて、月菜さん。柚瑠木さんはこんな事であなたを責めたりしないわ。今は何も考えちゃ駄目よ。」

「はい……」

 月菜さんが小さく頷いたのを確認して、私はテーブルからスマホを一つ手に取った。タップして中を確認してみると、そこに登録されているのは聖壱さんの携帯の番号の一つだけ……

「私が聖壱さんに電話をかければいいんでしょう?」

 わざと彼らに見えるように、聖壱さんの番号に発信する。会話もちゃんと周りに聞こえるようにスピーカーに切り替えた。

「物わかりの良い女性で助かります。まず最初は、貴女が聖壱君に助けてもらうように頼んでくださいね?」

「……分かったわ。」

 男性は余裕からか笑みを浮かべ煙草を口に咥える。見てなさいよ、そんな余裕ぶっていられるのも今のうちだけなんだから。

『プルルルル……プルルルル……プルルルル……もしもし?』

 数回のコール音の後、聖壱さんの声が聞こえてきた。彼の声を聴いて少し安心したの、やはりこんな状況で不安だったのかもしれないわ。


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