甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
月菜さんを庇い、衝撃に備えて身構え瞳を閉じる。けれどもいつまでたっても私の身体に狭山常務の手が触れることは無く……
そっと瞳を開くと、狭山常務の手首を掴んだ聖壱さんが立っていたの。ドアの傍には月菜さんの夫の二階堂 柚瑠木さんの姿も……
「香津美、月菜さん。2人とも無事か?」
聖壱さんの力強い声……凄くホッとする。このまま彼に抱きつきもっと安心したい気持ちはあるけれど、今は我慢しなくてはね。
「香津美さん、月菜さんをこちらに……」
私たちのすぐそばまで来た柚瑠木さんが、私にしがみついていた月菜さんをそっと受け止めて優しく抱きしめた。意外だわ、冷静沈着な柚瑠木さんが月菜さんにはこんな風に接してるのね……
「柚瑠木さん、すみません……私、柚瑠木さんにご迷惑を……」
「いいえ、月菜さんは何も悪くありません。僕は迷惑だなんて思っていませんから。」
柚瑠木さんのその言葉を聞いて月菜さんはホッとした表情を浮かべた後、そのままフッと気を失ってしまった。きっと彼女は柚瑠木さんのことだけをずっと……
「香津美……待たせてすまなかったな。俺達がいない間、月菜さんを守ってよく頑張ってくれた。」
「これくらいの事こと、なんてことないわ。けれど、まあ……後で褒めてくれてもいいわよ?」
ほらね、こんな事を言えるくらいの余裕はあるの。後で褒めてくれてもいいなんて……私にしては珍しく甘えたことを言ってしまった気もするけれど。