甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
「お前達、どうしてここが!?」
狭山常務は聖壱さんから掴まれた腕を力づくで外してから、彼らをきつく睨んだ。よほど聖壱さん達がこの場所に来たことが予定外だったのでしょうね。
まあそうでなければ私達を攫うなんて大胆な事はしなかったでしょうし。
「どうしてだって?不正取引の証拠を集められ焦っているアンタ達が、俺達の妻に目を付けることは最初から分かっていた。そんな状態で、妻にいつ何をされるか分からないのに俺と柚瑠木が何の対策もしないでいると本気で思っていたのか?」
「……なんだと!?」
確かに狭山常務たちは私と月菜さんの鞄の中やスマホなどはしっかりと調べていたようだけど……それくらいの事はこっちも予想済みなのよ。
「そうね、もちろん私も発信機くらい付けているわよ?このパンプスのヒールの部分……貴方達は疑いもしなかったようだけれど。」
そう、私は奪われた鞄の中、そのメイク用品の中に一つ。そしてこのパンプスのヒールに一つ発信機を付けてもらっていたのよ。
「それにこれもそうですよ、気付きませんでしたか?妻が持っているこのマスコットも怪しまないで……余程ご自分の作戦に自信があったのでしょうね。」
柚瑠木さんは気を失った月菜さんを抱きしめたまま、右手で白クマのマスコットを持ってみせた。
きっと月菜さんのためにあのマスコットは肌身離さず持っておくように言っておいたのでしょうね。