甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
「お前達は、ふざけた真似を……!お前の妻たちがどうなってもいいと言うのか!?」
どうやら狭山常務は自分たちがこっちの罠にかかっていた事に気付いたようで、顔を真っ赤にして怒っている。周りの男女も焦ったように顔を見合わせているけれど……今頃気付いても、もう遅いわよ?
「……これですよね?」
柚瑠木さんがスーツのポケットの上着から、いくつかのUSBメモリーを取り出して狭山常務達に見せる。
多分あれが聖壱さんと柚瑠木さんが集めた、彼らの不正取引の証拠なのでしょうね。
「貴方達はずっとこれが欲しかったんですよね?このUSBの中には貴方達の悪事の全てが入ってますよ。」
そう言って柚瑠木さんはそのUSBを聖壱さんに渡したの。柚瑠木さんから渡されたものと聖壱さんが自分のポケットから取り出したもの、その手に持っていた数本のUSBメモリーが次の瞬間……宙に浮いた!
「そんなに欲しけりゃ、くれてやる!」
そう、聖壱さんは何のためらいもなくUSBメモリーを狭山常務に向けて投げたのだった。柚瑠木さんも聖壱さんのそんな様子を黙ってみているだけ。
「うわっと!……これが私たちの不正取引の証拠!?ではこれを、人質と交換で私達に渡してくれるということなんですね?」
USBを拾って狭山常務は聖壱さん達をジッと睨んでいる。彼の中ではまたこの取引は終わってないつもりなのでしょうけれど……
「ええ、どうぞ。まあ、中身はコピーし、今頃は全て狭山社長に全て確認してもらっているはずですから。」
そう、今頃はきっとこの出来事も狭山社長に伝わっているはず。もう狭山常務は無傷ではいられなくなるのよ?
「それにさっき狭山常務の口から【人質】という、妻を攫った決定的な言葉もくれたしな?」
聖壱さんは小型のボイスレコーダーを取り出して見せた。やはり私の夫は抜け目がないわね。