アヤとり
「ほら、もう上がっていいよ」
「はあい」
今日も何事もなく1日が終わりそう。
不服そうな星君を横目にフロアに向かう。
私は大学を卒業した後、必死の就活の末にもともと希望していた美容関係の会社に就職することができた。
でも、かつての自分自身に対する期待値が高すぎたのだと思う。
自分で設定するハードルがどんどん上がっていき、それが自分の首を絞めていった。
このことに気が付いたのは、身体を壊した後。
そんなときに、新しい職場として選んだのは大学時代にお世話になっていた、このカフェだった。
背伸びをせずに仕事をすることの大切さを思い出した大切な職場。
「灯さん、私早めに来たのであがっていいですよー」
「いいの? ありがとう」
いつも遅れてくる遅番の子が珍しく早く来たみたい。
ありがたく上がらせてもらうために、エプロンを外しながら事務所に戻る。
世間では今日は祝日。
事務所の窓から見える駅は人であふれかえっていた。
はあ……私も。
いや、昨日現場行ってきたばっかりだからわがままは言えないか。
「お疲れ様でーす」
「お疲れ様でしたー」
挨拶を済ませて従業員出口からでると、一気に春の香りがした。
夕方になると寒く感じるが、それでも春を感じさせる風だった。
もう4月だもんね。
今年の桜は遅咲きらしい。今年の冬は寒かったから。
ショルダーバッグをあさってイヤホンを探す。
家はここから歩いて10分ほど。
通勤時間が短いのもこの職場の好きなところ。
その時。大きな風が吹いた。
「はあい」
今日も何事もなく1日が終わりそう。
不服そうな星君を横目にフロアに向かう。
私は大学を卒業した後、必死の就活の末にもともと希望していた美容関係の会社に就職することができた。
でも、かつての自分自身に対する期待値が高すぎたのだと思う。
自分で設定するハードルがどんどん上がっていき、それが自分の首を絞めていった。
このことに気が付いたのは、身体を壊した後。
そんなときに、新しい職場として選んだのは大学時代にお世話になっていた、このカフェだった。
背伸びをせずに仕事をすることの大切さを思い出した大切な職場。
「灯さん、私早めに来たのであがっていいですよー」
「いいの? ありがとう」
いつも遅れてくる遅番の子が珍しく早く来たみたい。
ありがたく上がらせてもらうために、エプロンを外しながら事務所に戻る。
世間では今日は祝日。
事務所の窓から見える駅は人であふれかえっていた。
はあ……私も。
いや、昨日現場行ってきたばっかりだからわがままは言えないか。
「お疲れ様でーす」
「お疲れ様でしたー」
挨拶を済ませて従業員出口からでると、一気に春の香りがした。
夕方になると寒く感じるが、それでも春を感じさせる風だった。
もう4月だもんね。
今年の桜は遅咲きらしい。今年の冬は寒かったから。
ショルダーバッグをあさってイヤホンを探す。
家はここから歩いて10分ほど。
通勤時間が短いのもこの職場の好きなところ。
その時。大きな風が吹いた。