絶対様
☆☆☆

翌日学校に来てもぼーっとしてしまって授業に集中することができなかった。


気がつけば昨日の美緒とのやりとりを思い出してしまう。


そんなときに限って先生に当てられる回数が多くて、あたしは慌てて教科書に視線を落とした。


6時間目の授業は移動教室で、音楽の授業だった。


少しくらい話を聞いていなくても大丈夫な授業なので、ホッと胸を撫で下ろす。


音楽室は最上階の3階にあるため、あたしは教科書と筆記用具を持って教室を出た。


何人かのクラスメートたちに一緒に行こうと声をかけられたけれど、そんな気分にならなくてひとりで階段を上がっていく。


ボンヤリと前を見ると咲が階段をあがっていた。


しかし右足を怪我しているから階段をあがるのは大変そうだ。


いつも一緒にいる真里菜と光は先に音楽室へ行ってしまったのか、姿が見えなかった。


ひとりで、危なかったしいな。


そう思ったときだった。


なにがあったのか、不意に咲の体が大きく揺れるのを見た。


「咲?」


後ろから声をかけると、咲が大きく目を見開いて振り返った。


それがよくなかった。
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