絶対様
「あ、光?」


マスクをつけたその子は光で、あたしは歩調を緩めていた。


「あぁ……」


光があたしに気がついてもけだるそうにそう呟くだけだった。


「遅刻するよ?」


そう声をかけても反応しない。


「ねぇ、聞いてる?」


光の腕を掴んだとき、にらまれてしまった。


仕方なく腕を離して隣を歩くことにする。


以前ならこうして光と2人で学校へ行くなんて考えたこともなかった。


咲や真里菜や光の姿を外で見かけると、まるで泥棒のように身を潜めていたのだ。


「遅刻するんだから、早く行けば?」


「光は遅刻してもいいの?」


「別に」


光はそれだけ言うとそっぽを向いてしまった。


今日はやけに機嫌が悪いみたいだ。


光なんてほっといて先に行ってしまおうか。


そう思ったときだった。


見えてきた校舎からホームルームを開始するチャイムが聞こえてきたのだ。


まだ校門近くにいた生徒たちが、慌てて校舎へ駆け込んでいく。
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