絶対様
のどかな景色。


あたしから見たらそれだけだったのに、不意に真里菜は走り出したのだ。


まるでなにかを見つけてそれから逃げるように。


あたしは咄嗟に周りを確認したけれど、さっきまでと同じ景色が広がっているばかりだ。


怪しい人はどこにもいない。


真里菜には一体なにが見えていたんだろう?


気になって、あたしは更に真里菜の後を追いかけることにした。


教科書やノートが入っているカバンを持っているはずなのに、真里菜の足は速くて見失ってしまいそうになる。


真里菜は時々振り返り、そしてまた弾かれたように走り出すということを何度も繰り返している。


気がつけば真里菜のアルバイト先の近くまでやってきていた。


徒歩で20分はかかるこの場所に半分の時間でついてしまった。


あたしは体力の限界を感じて立ち止まった。


心臓が早鐘を打っていて、体中に汗が噴きだしている。


少し休憩しないと、これ以上は無理だ。


コンビニの中のイートインスペースで休もうかと思ったとき、真里菜が道の角を曲がってくのが見えた。
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