絶対様
でも、ある日偶然見てしまったのだ。


学校帰りにボロボロの借家の前と通りかかったとき、その家から真里菜が出てきたのだ。


真里菜の後ろからは小学生くらいの男の子が1人、幼稚園くらいの女の子が1人いた。


2人ともひどく汚れた服を着ていて、サイズも合っていないのはひと目みてわかった。


「さっさと酒買って来い!」


そんな怒号が家の中から聞こえてきて、真里菜は顔をしかめて玄関先へ視線を向ける。


「わかってる」


短く返事をして、幼い弟妹の手を引いて歩き出したのだ。


あたしは電信柱に隠れてその様子を見ていた。


いまのこの時代にこんな家族がいるのかと驚愕したのとを覚えている。


とにかく、真里菜の抱えている問題やストレスは咲の非ではないということがわかった。


そして光だ。


光はあの頃ちょうどニキビが増え始めた時期だった。


それははたから見ていてもわかるほどで、よく咲たちにも相談していた。


今でも光は手鏡を持ち歩いて自分の顔を確認することに余念がない。


そういうことがあって、3人ともストレスと抱えていたのだ。


タイミングが悪かったとしかいいようがない。


そして今日、部活動がないと知っていた咲たちはあたしと美緒を体育館倉庫に呼び出したというわけだ。
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