絶対様
「ご、ごめんなさい」


なにも言えずに咲を見つめていたあたしに、美緒が言った。


咲たちの視線が一斉に美緒へ向かう。


咲以外にここにいるのは三枝真里菜(ミエ マリナ)と二岡光(ニオカ ヒカル)の2人だった。


2人とも同じ2年A組のクラスメートで、咲の腰ぎんちゃくだった。


「真里菜」


咲に名前を呼ばれて、真里菜が一歩前に出た。


そしてポケットの中からカッターナイフを取り出す。


それを見た瞬間あたしと美緒はかすかに震えた。


真里菜がカチカチとわざとらしく音を立てながらカッターの刃を出していく。


カチカチカチッと倉庫内に響く音に、あたしは咄嗟に美緒の手を掴んでいた。


小さくて柔らかな美緒の手は震えている。


カッターを握り締めた真里菜があたしたちの前に腰をかがめた。


そして品定めをするようにあたしと美緒を交互に見つめる。


それはまるで、これからどちらにカッターを突き立てるか思案しているように見えて、あたしは咄嗟に視線をそらせた。


その瞬間、真里菜のスカートに視線が行った。


この学校の制服で間違いないが、真里菜のスカートのすそあたりには紺色のラインが一本入っている。


スカートの地の色も紺色だからよく見ないとわからないけれど、それはひとつ前のデザインの制服だった。
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