絶対様
「今日はひとりなのかい?」


クリームソーダを持ってきてくれた店長にそう言われ、あたしはうなづいた。


ここに来るときはいつも美緒が一緒だったからだ。


今日も、美緒へのメッセージにこの喫茶店の名前を書いておいた。


「たまにはひとりでこういう場所に来るのもいいもんだろう?」


「そうですね。また大人になったような気分になります」


あたしは少し照れながら答えた。


3人から逃げるためだなんて、口が裂けても言えない。


「じゃあ、ごゆっくり」


店長は柔らかな笑みを残してカウンターの奥へ戻っていく。


時間がまだ早いせいで店内にはあたし以外のお客さんはいなくて、とても静かだった。


あたしはクリームソーダを一口飲んでホッと息を吐き出した。


サクランボが乗っているクリームソーダはこの喫茶店が開店したときからなにも変わっていないらしい。


あたしも、これを飲むとなんとなく懐かしい雰囲気に浸ることができた。
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