絶対様
美緒は相変わらず灰色の目を開けていて、そこに座っているだけだ。


糞尿をした形跡もなく、飲み食いした形跡もない。


生きている人間ではありえないことだ。


「ねぇ美緒」


あたしは美緒の右手を握り締めた。


その冷たさにハッと息を飲んで美緒の手を見つめる。


その手はひどく乾燥していて、カサカサした手触りだ。


顔をしっかりと確かめて見ると、唇や頬の皮膚が浮いてきているのがわかった。


「今度、水を持ってきてあげるからね」


聞こえているかどうかわからなかったけれど、あたしはなにも言わない美緒にそう声をかけて、そっとリビングから出たのだった。
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